
【絵本】えほん ときの鐘
内容説明
時計がまだ存在しなかった江戸時代、人々に時を知らせていたのは「時の鐘」の音でした。鐘つき役の孫である新吉は、ある日おにごっこをしている最中に、初めて外国人と出会います。その人物はヤンと名乗り、遠いオランダからやってきた植物学者だと語ります。ヤンは、日本の美しい庭を訪ね歩きたいという夢を持っていました。
実はヤンは、長崎のオランダ商館から江戸参府のために日本橋の長崎屋に滞在しているオランダ人でした。しかし、当時の規則でオランダ人が自由に町を歩くことは許されていません。そこで、新吉は友人のべらぼうさんに相談し、ヤンを船に乗せて江戸の町を案内する計画を立てます。
新吉とヤンが一緒に江戸の風景を巡るうちに、新吉はこれまで見慣れていたはずの町が、まったく新しい姿に見え始めます。ヤンの視点を通して、江戸の町が驚くほど美しく感じられるのです。
『せかいいちうつくしいぼくの村』や『えほん東京』を手がけた小林豊が、自身が育った東京を舞台に描いたこの絵本は、江戸の町の魅力を鮮やかに伝える珠玉の一冊です。
知育や教材で活用する際のポイント
この絵本は、江戸時代の暮らしや文化、そして国際交流の始まりを子どもたちにわかりやすく伝える絶好の教材です。物語の中で「時の鐘」や江戸の町並みが描かれることで、時計が普及する以前の日本における時間の概念や生活の工夫を知るきっかけになります。これを通じて、現代との違いを比較しながら歴史的背景を学ぶことができます。
また、新吉とヤンの交流を通じて、多文化理解や異文化コミュニケーションの重要性を自然に伝えることができます。外国人との出会いや、視点が異なることで新たな発見があるというテーマは、グローバル化が進む現代において子どもたちに考えてほしいポイントです。物語の中で新吉がヤンと共に江戸の美しさを再発見するシーンは、身近な環境を新しい目で見ることの大切さを教えます。
さらに、この絵本は江戸の風景や生活を鮮やかに描写しているため、絵を見ながら子どもたちと一緒に「これは何だろう?」と話し合い、想像力を育むことができます。また、オランダのヤンが登場する点をきっかけに、江戸時代の海外との関係や長崎の出島について簡単に説明することで、歴史と地理の学びも深まります。
子どもたちの興味や感性を引き出すために、読み聞かせをしながら質問を投げかけたり、絵本を通じたアクティビティを取り入れるとより効果的です。この作品は、歴史、文化、自然、そして人と人とのつながりの大切さを楽しみながら学べる一冊です。