
【絵本】「とうさん」
内容説明
ある日、ぼくの家に新しい「とうさん」がやってきた。でも、ぼくは彼のことをどうしても「おじさん」としか呼べなくて、そんなぼくにかあさんは怒る。でも、「おじさんでいいよ」ととうさんは優しく笑ってくれた。その言葉が少しだけぼくを安心させた。
とうさんとふたりで釣りに出かけたり、ふたりだけのひみつを共有したりするうちに、ぼくはだんだんとうさんのことが好きになっていった。でも、それでも「とうさん」と呼ぶことはできなくて、相変わらず「おじさん」と呼び続けていた。そんなぼくにとうさんは笑顔を見せてくれるけれど、その笑顔にはどこか寂しさがにじんでいる。そして、最近気づいたことがある。とうさんの体が少しずつ緑色になり、透明になっていくように見えるのだ。
とうさんに何が起きているんだろう?どうすればいいんだろう?ぼくは悩む。そんなぼくの姿を通して、このお話は家族になるということの切なさと温かさを深く描いている。内田麟太郎さんが自身の経験をもとに生み出した、心に響く物語だ。つよしゆうこさんの美しい銅版画も、この世界観をより豊かに表現している。
知育や教材で活用する際のポイント
この絵本は、新しい家族を迎える際の子どもの戸惑いや成長を描いた物語であり、親や教育者にとって非常に貴重な教材となります。新しい環境や関係性に馴染むことが難しい子どもの気持ちが丁寧に描かれており、子ども自身の感情に寄り添いながら、家族の在り方について考えるきっかけを提供します。特に、主人公の「とうさん」を「おじさん」としか呼べない葛藤や、それに対する「とうさん」の優しい受け止め方は、子どもが安心感を得るためには無理に急かさないことの重要性を示しています。
保育や教育の現場では、この絵本を通じて「家族とは何か」「人を受け入れるとはどういうことか」といったテーマを話し合う機会を設けることができます。また、家庭では、親子で一緒に読みながら、子どもが自分の気持ちを言葉にする手助けをすることができます。例えば、「ぼくだったらどう思う?」といった質問を投げかけることで、子どもの感情表現や共感力を育むことができるでしょう。
さらに、物語の中に描かれる「とうさん」の変化や「寂しさ」の描写は、子どもたちが他者の気持ちを想像する力を養う助けとなります。絵本の美しい銅版画も、子どもたちの創造力を刺激する素材として活用できるため、感情やイメージを膨らませる活動に繋げることができます。物語の切なさと温かさが共存するこの絵本は、子どもたちの心に寄り添いながら、多様な家族の形を学ぶ一冊として非常におすすめです。