
【絵本】海賊
内容説明
『ちからたろう』から44年の歳月を経て、田島征三が新たに生み出した情熱の絵本が登場しました。物語の主人公は海を愛するひとりの海賊。彼はある日、人魚と恋に落ちます。ただ静かに、愛する人とともに穏やかな暮らしを送りたい——それが彼の唯一の願いでした。しかし、そのささやかな願いは阻まれます。
愛する人を悲しませる者は誰か。大切な海を汚す者は誰か。その問いに向き合い、海賊はひとりで立ち上がります。彼の戦いは、ただの復讐ではありません。深い愛と正義の心からくるものでした。
この物語は、長い間苦しみや悲しみを抱えながらも、優しく輝く魂を持ち続ける人々の息吹を受けて作られました。作品全体からは、豊かな生命力と、未来を守りたいという強い思いがにじみ出ています。
作者の田島征三はこう語ります。「人は見た目が異なるものをすぐに嫌い、差別しがちです。それなのに、目に見えないものには恐れを抱いても、声を上げることが少ない。このままでは、子どもたちの未来をだめにしてしまう!」そのメッセージが、物語を通じて力強く伝わってきます。
理屈ではなく、心で感じられるこの作品。海賊と人魚をめぐる物語を通じて、未来への希望と深い問いかけが広がります。
知育や教材で活用する際のポイント
『ちからたろう』で知られる田島征三が手掛けたこの絵本は、愛と正義、自然への敬意をテーマにした深いメッセージを持つ作品です。物語の主人公である海賊が愛する人魚や海を守ろうとする姿は、子どもたちに"自分以外の存在を大切にする心"を学ばせる貴重な教材になります。絵本を読む際は、まず海賊の行動や気持ちに子どもたちが共感できるよう、一緒に話し合いながら進めるのが良いでしょう。
また、作中で描かれる「海を汚す者」や「愛する人を悲しませる者」というテーマは、環境問題やいじめのような現実の問題とも結びつけやすい内容です。この物語を通じて、子どもたちが自然環境や他者への配慮について考える機会を作れます。例えば、読み終えた後に「自分たちの周りで海賊のように守りたいものは何か?」と問いかけてみると、子どもたちの視点や意識が広がるでしょう。
さらに、この絵本は感情の豊かさや多様性を尊重する大切さも教えてくれます。田島氏が「見た目が異なるものを嫌う」という問題を指摘しているように、見た目や違いにとらわれず相手を理解することの大切さを子どもたちに伝えるきっかけとして活用できます。保護者や先生自身がこの作品に込められたメッセージをしっかりと受け止め、日常の中で子どもたちに実践的な例を示すことが、より深い学びにつながるでしょう。