
【絵本】もしものせかい
内容説明
「もしものせかい」は、大切なものを失ったときの心の向き合い方を描いた物語です。ある朝、男の子が目を覚ますと、愛用していたロボットが話しかけてきます。「急な話だけど、ボク、もしものせかいに行かなくちゃいけないんだ」と。その言葉に戸惑う男の子に、ロボットは「もしものせかい」がどんな場所なのか、そしてなぜそこに行く必要があるのかを説明します。さらに、ロボットのいない「いつものせかい」でどう生きていけばいいのかを語り始めます。
この絵本は、著者ヨシタケシンスケさん自身が悲しい出来事を経験した際に生まれたものだといいます。誰かに頼まれて描いたのではなく、自分の気持ちを整理し、前に進むために必要な物語だったそうです。失ったものを忘れたり、元の自分に戻ろうとするのではなく、その喪失感を抱えたままどう生きていくか――その「先」を見つめたメッセージが込められています。
この絵本は、悲しみや別れを経験したすべての人に寄り添う作品です。「もしものせかい」という言葉が持つ意味を、そっと心に届けてくれることでしょう。
知育や教材で活用する際のポイント
「もしものせかい」は、子どもたちが悲しみや別れという感情に向き合うきっかけを与える絵本です。この物語を知育や教材として活用する際のポイントは、まず「感情を言葉にする大切さ」を子どもたちと一緒に考えることです。登場するロボットが「もしものせかい」に行く理由や、そこでの意味を男の子に丁寧に説明する場面を通じて、子どもたちに自分の気持ちを話す練習を促すことができます。悲しい出来事があった際に、自分の心の中を言葉にできる力は、成長過程でとても大切です。
また、この絵本は「別れの後の世界」をどう受け入れるかについても考えさせてくれます。ロボットがいなくなった「いつものせかい」での生き方について語る場面は、喪失感を抱えたまま前に進むためのヒントとなります。例えば、子どもたちに「大切なものを失ったあと、どうしたら心が少しでも楽になるかな?」と問いかけ、共感や想像力を引き出す時間を作ることができます。
さらに、この絵本は大人にも深いメッセージを届けてくれる作品です。親や先生自身も、子どもにとって悲しい出来事にどう寄り添えば良いのか迷うことがあるはずです。この絵本を読み聞かせながら、子どもたちと一緒に感情を共有し、心の整理をサポートする方法を学ぶ機会として活用できます。「もしものせかい」は、子どもたちと感情を育むコミュニケーションの架け橋となる一冊です。