
【絵本】いのちの木
内容説明
森に暮らすみんなにとって、キツネはとても特別な存在でした。そして、ある日キツネは旅立ちます。それでも、キツネの存在は森のみんなの心に深く残り続けました。「いてくれるだけであたたかい。いなくなっても、あたたかい。」そんな想いが、キツネをさらに大切な存在にしていくのです。
キツネがいなくなったことで、森の仲間たちは深い悲しみに包まれます。しかし、キツネと過ごした時間を思い出し、それぞれの記憶を分かち合ううちに、悲しみは少しずつ変わっていきました。そして、キツネが最後に横たわっていた場所から、彼と同じ色をした小さな芽が顔を出します。
その芽は、みんなのキツネへの想いを受けて成長し、やがて大きな木へと育ちます。仲間たちの水やりや光のような気持ちが、その木をさらに特別な存在へと育てていくのです。
大切な人との別れは、誰にとっても避けられない出来事です。その人が目の前からいなくなったとき、心に重くのしかかる悲しみを抱えることもあるでしょう。でも、その人を思い出したり語り合ったりすることで、きっとその存在を感じられる瞬間が訪れるのではないでしょうか。
この絵本は、命のぬくもりやその深い意味を静かに、まっすぐ伝えてくれる物語です。イギリスで生まれたこの作品を、森山京が美しい日本語で紡ぎました。ぜひ、美しい木に会いに来てください。
知育や教材で活用する際のポイント
この絵本は、命のぬくもりや別れ、そしてそれを乗り越える心の成長を描いた深く心に響く一冊です。子育てや教育の現場で活用する際には、子どもたちが「別れ」というテーマに触れながらも、前向きな気持ちを育めるよう配慮することが大切です。たとえば、物語の中でキツネが旅立つシーンでは、子どもたちが自然な形で「いなくなること」について考えられるよう、感情の共有や質問を通じて寄り添いましょう。
また、キツネを思い出しながら仲間たちが悲しみを乗り越える過程は、子どもたちに「大切な人との思い出やつながりは、心の中で生き続ける」という希望を伝える絶好の機会です。それぞれの記憶を語り合う仲間たちの姿を通じて、自分の気持ちを表現する大切さを学ぶ時間として活用できます。子どもたちに「もしキツネが友達だったら、どんなことを思い出す?」といった問いかけをすることで、自由な発想で物語に共感する力を育てられるでしょう。
さらに、キツネが残した芽が成長する様子は、命や自然の循環について考えさせるきっかけとなります。実際に植物を育てる活動と組み合わせることで、絵本のテーマをより実感を伴った形で体験させることもおすすめです。この絵本は、子どもたちの心に寄り添いながら、命の尊さや絆の意味を伝える教材として非常に優れています。親や先生が問いかけや対話を通じて物語を深めることで、子どもたち一人ひとりにとって特別な学びの時間を提供できるでしょう。